(mizuaoiの写真館改題)

(こちらは石川の植物の別館です)

 私の基本ホームページ「石川の植物」の別館が、現在閲覧不能になっております。そこには石川の植物のFILEの8割ほどが入っているので皆様にご迷惑をおかけしております。そこでサーバーを替えて、閲覧不能のFILEを改訂しつつアップし直すことにしました。

88 アセビ  Pieris japonica (Thunb.) D.Don ex G.Don  subsp. japonica
              Ericaceae(ツツジ科)


 本FILEは、石川の植物の別館に掲載していたものですが、閲覧不能となっていることもあり、その後の知見も加えて改訂増補し、ここに掲載することと致しました。関心を持たれた方は、「植物生態観察図鑑−おどろき編」の次作である「植物生態観察図鑑−ふしぎ編」(全国農村教育協会 刊行日時未定)の「アセビ」の章にさらに詳しい内容で登場しますので、同書をお求め下さいますようお願い致します。

 アセビの日本における分布は、日本の野生植物 木本2 平凡社 によれば、本州(宮城県以南、関東・中部地方の太平洋側および近畿・中国地方)・四国・九州となっています。石川県では極めて珍しく、現在野生の確認されているのは、加賀地方の特定の地域だけです。
 深津(1989)には「アセビは万葉仮名では「安之碑」「安志妣」などと書かれるように、古くはアシビと呼ばれていました。漢名は普通馬酔木の名を用いる。葉や茎にアセボトキシンという動物の呼吸中枢を麻痺させる有毒成分が含まれており、馬などがこれを食べると、あたかも酔ったようにふらつき、果ては昏睡状態に陥るところから起こったものだという。こうした現象を、馬などがアシヒク(足痛)さま、つまり足の不自由な状態にたとえ、これが転じてアシビになり、さらにアセビへと変化したものであろう。」とあります。

図1 花盛りのアセビの株(2005年4月2日 石川県)

図2 園芸品種(クリスマスチェアー)。小さく開いた花冠の口部に柱頭が見えている

 花は壺(つぼ)型で、切り開くと、1個の雌しべの周りに10個の雄しべがあることがわかります(図3)。図3・4で見るように、狭い花筒の中の10個の雄しべは、5個ずつが内外の2輪に配置されています。外輪の雄しべと内輪の雄しべは交互に位置し、外輪の5個が背が低く、内輪の5個は背が高い。なお、葯を構成する2個の半葯のそれぞれの背面から1個ずつの刺状突起が伸びており、外輪の葯の隙間から内輪の葯の刺状突起が伸び出し、狭い空間を不規則に分け合いながら合計20個の刺状突起が花筒内部でひしめいています(図4)。
 花の奥(底)にある蜜を求めて昆虫が花の中へ口を差し込むと、この刺状突起に触れて葯が揺れる(刺状突起には、図5のようにさらに細かい突起があって昆虫に接触しやすくなっています)。花が下向きに咲いて、葯の穴も下を向いているので、葯が揺れると、昆虫の頭部へ花粉が降り注ぐ仕組みとなっています。この昆虫が次の花を訪れて蜜を吸おうとすると、頭部に付いた花粉が突出した柱頭に受粉されるという、良く計算された構造の花となっています。

図3 内外2輪に配列した葯から伸びた刺状突起が花筒内に広がる。花冠を一部切断して見た図である
図4 雄しべが10個あり、内外5個ずつの2輪に配置する。葯の背面にある20個の刺状突起が花筒内部をふさぎ、花の奥にある蜜を吸おうとする昆虫が触れると、葯が揺れて花粉を頭部に降り注ぐ仕組みとなっている 

 と、ここまでは少し詳しい解説書などには書いてあるのですが、刺状突起にはもっと秘密があります。こんど、アセビの花を見る機会があれば、詳しく観察してみて下さい。何を観察すれば良いのかは、以下をお読み下さい。

図5 刺状突起上にはさらに細かい突起がある
図6 刺状突起には捻れがある。拡大図

「狭い空間を不規則に分け合いながら合計20個の刺状突起が花筒内部でひしめいています」
と前に述べましたが、刺状突起を見ていて不規則の原因が分かりました。刺状突起が捻れているからで、根元付近では特に捻れが強いので、その捻れ具合によって、刺状突起は不規則に暴れて花筒の中で踊っているのでした。右の半葯(図4参照)に付く刺状突起は左巻き(反時計回り)に、左の半葯に付く刺状突起は右巻き(時計回り)に捻れています(図6)。目を凝らして観察するといろいろなことが見えてきて楽しいものです。
 右巻き・左巻きの定義は牧野式(図7・8)によっています。

図7 反時計回りに廻っているので左巻き(牧野式) 図8 時計回りに廻っているので右巻き(牧野式)

文献
 深津 正. 1989. 植物和名の語源:198. 八坂書房.
 山崎 敬.1989.日本の野生植物 木本 U:149.平凡社. 


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