(mizuaoiの写真館改題)

(こちらは石川の植物の別館です)

 私の基本ホームページ「石川の植物」の別館が、現在閲覧不能になっております。そこには石川の植物のFILEの8割ほどが入っているので皆様にご迷惑をおかけしております。そこでサーバーを替えて、閲覧不能のFILEを改訂しつつアップし直しております。ヒメザゼンソウのFILEもその例です。

80 ヒメザゼンソウ Symplocarpus nipponicus Makino
      ARACEAE(サトイモ科)


 春を代表する花の一つに「ミズバショウ」(図1)があります。大きく美しいのでもてはやされていますが、ほぼ同じ時期に多少目立たない暗紫褐色の仏炎苞を付けてひっそりと咲く「ザゼンソウ」(図2)も捨てがたい味をもつ花です。
 ところで、「ザゼンソウ」よりも更に目立たない、ほとんど人に気づかれずに咲く「ヒメザゼンソウ」(図3)という植物があります。今回は、この「ヒメザゼンソウ」にスポットを当ててみました。小さくて可愛いんです「親指姫」といった感じですかね。

図1 ミズバショウ(2007年4月27日)
図2 ザゼンソウ(2001年4月7日)
図3 わずか数センチメートルの小さなヒメザゼンソウの花(花序)(2009年7月6日)

 ヒメザゼンソウは、雪解けとともに地上に姿を現します。しかしこの時期、花は付けずに、葉を展開して栄養を蓄えることに専念しているようです。6月になると、葉が枯れて入れ替わるように花が咲き、場所によっては8月上旬まで花が見られます(早い時期に開花するものでは葉を残したままの状態で花が見られることもあります)。
 図3のように、地上すれすれのところで、落ち葉をかぶったりしながらの目立たない花なので、いきなり花を探すのは至難の業です。春、葉を見つけておいて、6月に心覚えの場所を探すといいでしょう。

図4 ヒメザゼンソウの群生。長野県白馬村姫川源流(2004年5月3日)
図5 6月、葉が枯れてくる(2002年6月16日)
図6 株の根元に小さく咲いている花序と昨年の花による果序。まさしくザゼンソウのミニチュア版だ(2017年6月18日)
図7 花のある株を上から見た図。この写真の中で、花(花序)を4個、果実(果序)を1個見つけられたら偉い(2002年6月16日)
図8 今年の花序と前年の花による果序とを同時に見ることができる。昨年の果序が曲がっていることに注目(2001年7月8日)
図9 仏炎苞を取り除いた花序。いろんな開花段階の花が見える(2002年6月17日) 図10 はじめに雌しべが顔を出す
図11 雌しべの下側から最初の雄しべが顔をのぞかせている 図12 下側の雄しべの葯(やく)が伸びてきた
図13 下側の雄しべの葯が開いて花粉を出した 図14 次に上側の葯が出て開いた
図15 前年に開花した花による果序

 ヒメザゼンソウの果実がいつまで経っても熟したように見えないので、どのようにして裂開するのかと時々観察していました。2017年10月22日、台風21号が日本各地に被害をもたらしました。石川県を直撃したわけではありませんが風雨が強く外へ出ることができませんでした。10月24日に様子を見に出ますと、見事に果実が崩壊していました。
 この場合、大きく二つに割れて、白いふかふかの組織に包まれた種子が露出していました。この果実の崩壊の様子は、ミズバショウの果実の崩壊とよく似ています。

 
仮説ですが、果皮が大きく2分割していますが果実ごとにバラバラになっているのではないので種子の周りの組織が水分を吸って膨潤して中から破裂するように崩壊したのではないかと考えています。

図16 1年前の花による果実。いつ完熟になるのか(2011年10月17日)
図17 図16の1週間後、果実が崩壊していた。新鮮な状態でここ1〜2日のうちに崩壊したらしい(2017年10月24日)
図18 ミズバショウの種子。種子の周りがふわふわの組織に包まれており、この感じはヒメザゼンソウの種子と似ている(2001年7月15日)。植物生態観察図鑑−おどろき編(全国農村教育協会)39ページ図26参照
図19 崩壊した果実の外側
図20 18個の種子が得られた(2017年10月24日)

 花を見ると、暗紫褐色で肉厚の仏炎苞に包まれた花序があります。ミズバショウなどと同じく1本の軸のまわりに花が付いている形(肉穂花序:にくすいかじょ)になっています。4枚の目立たない鱗片状の花被の間から、まず雌しべが顔を出し(図11)、次いで下側の雄しべが花粉を出し(図12・13)、上側の雄しべが花粉を出し(図14)、左右の雄しべが花粉を出すようです。この順番は、ミズバショウとそっくりです。(ミズバショウについてはここを見て下さい。
 ヒメザゼンソウの花茎は花が終わると下向きに曲がり(図8)果序が地面に接した形で冬を越します。果茎を冬の雪圧から守る作戦なのかもしれません。種子は翌年の秋頃まで1年がかりで熟するので、花の時期には、花と果実の両方を見ることができます(図7・8)。


図21 ヒメザゼンソウの株。図17のウバユリの株と比べて違いが分かったらえらい 図22 ウバユリの株。図16のヒメザゼンソウの株と比べて違いが分かったらえらい
図23 ヒメザゼンソウの葉脈の流れ(赤線)と葉の先端の形状に注目 図24 ウバユリの葉脈の流れ(赤線)と葉の先端の形状に注目

 ヒメザゼンソウの春の姿は、ウバユリととても似ています。図21のヒメザゼンソウと図22のウバユリの画像を見て、その違いが分かる人がいたら、尊敬ものです。
ヒメザゼンソウは、長らくウバユリと混同されていたものを牧野富太郎博士が花に気づき、新種として発表されたと聞きます。それ位よく似ています。
 両種が混生している場所がありましたので、近くで比べてみることができ、私には区別がつくようになりました。葉の立体感や色合い、光沢でも一応区別がつきますが、個体差があるので、確実に比較できるのは葉脈と葉の形です。図23・24 赤線でご覧のように、ヒメザゼンソウの葉脈は葉の縁を回り込むように伸びていますが、ウバユリの葉脈は葉の縁へむかってほぼ真っ直ぐに伸びています。  
 もう一つの決め手は、葉の先端部の形状です。葉の先端が鈍端なのがヒメザゼンソウで、葉の先端が鋭く尖っているのがウバユリです。この特徴は実物を観察したときには極めて明快に分かります。ただし、ウバユリの葉の先端が裏側へ巻いていることがあるので、一見「鈍端」のように見え、写真判定では困難な場合もあります。
 
あなたの近くにも、意外とヒメザゼンソウがあるかも知れませんよ。


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