(mizuaoiの写真館改題)

(こちらは石川の植物の別館です)


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 オウレンの性型については、植物図鑑では、雌雄異株とか、両性花と雄花とがあるなど、様々な記述があるが、実際の所は「両性花の株、雄株、雌株、両性花と雄花の混ざった株」が見られる。
 植物図鑑の記述を鵜呑みにするのではなく観察が重要である。
 オウレンの性型についても8ページにわたって詳しく解説。
 右の画像はオウレンの雌株。

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石川の植物


66 オニバス(3)閉鎖花と開放花 2017年

図1 オニバスの開放花

 オニバスは多数の花を付けるが、開花しないままで結実する閉鎖花が多く、花弁の開く開放花は少ない。
 私の栽培環境では開放花は1株に1〜3個と少なく、大きさも1mを超すような大きな葉に比べて驚くほど小さく、直径がわずか4cm位しかない(図1)。花は外側に4個の萼片があり、内側には多数の紫色の花弁が4個ずつ輪状に配列しており、内側の花弁ほど色が薄くなるグラデーションを示し、とても美しい。さらに内側には、下向きに開く葯が多数あり、赤いすり鉢形の柱頭に花粉が降り注いでいる。角野(1983)には、
「実際の開花がおこったときには受粉が完了している場合がほとんど」との記述があるので、このことについて解剖して確かめてみることにした。
 
 

図2 開放花の縦断面。赤い部分が柱頭で花粉の落ちているのも分かる。スケールはmm

 図2は、拙著「植物生態観察図鑑−おどろき編」(全国農村教育協会)に載せてある花の縦断面だが、赤い柱頭の上に花粉がこぼれている。しかし、「実際の開花がおこったときには受粉が完了している」を確認するにはこのような開花した花ではなく蕾を解剖しなければならない。
 
2017年、水中に在る蕾を5個以上解剖したが、いずれにおいても一部の葯は裂開し花粉をこぼしていた。「受粉」とは「花粉が雌しべの柱頭に付着する」ことなので先の角野の記述は正しいことが分かる。その観察の1例を紹介する。

図3 水槽の中のオニバス。8個の果実が見えている。中央にある先端が水底から21cm、先端から水面までが18cmの位置にある蕾を採取して以下の観察を行った
図4 採取した図3の蕾。3箇所で横断した位置のイメージ。図6はA面、図7はB面、図8はC面、図9はD面を撮影したものである。スケールは1/2mm
図5 上記の切断面がどのような位置になるかを別の蕾で再現したイメージ図。図6はA面、図7はB面、図8はC面、図9はD面を撮影
図6 図4のA面の観察。多くの葯が裂開して花粉を出しているのが見える 図7 図5と向かい合わせになるB面。赤い柱頭面に多数の花粉が落ちている
図8 図4のC面の観察。柱頭から10本の溝が伸びているのが分かる 図9 図4のD面の観察。柱頭から伸びた溝の奥に胚珠のあることから子房が10室であることが分かる

 図6で見るように葯が下向きに裂開して花粉を柱頭へ落としていることが分かる。図8の溝の奥は膨らんだ部屋になり胚珠が入っている。この蕾の場合には、子房が10室である。牧野日本植物圖鑑(1954)などでは「子房は8室」との記述があるが、日本水草図鑑(角野.1999)では「子房は8〜13室」となっている。後者の方が正確であろう。
 閉鎖花の蕾と開放花の蕾は形態的にも区別をすることはできないので、図4の蕾が、いずれであるかは分からないが、とにかく、蕾の時期にすでに花粉を散らせていることは明らかである。

次に最大の疑問が残る。
 オニバスの閉鎖花と開放花では形態上に違いがあるとは思われない。とにかく開花してみないと開放花であることが分からないのである。
岡田(1938)には、閉鎖花では114個の成熟種子ができたのに、開放花(岡田は開展花と称している)では117個の種子のすべてが発育不良である例が示され、
「開展花といえども絶対に完全種子を生ぜぬとは限らぬであろうが、少なくともその力が非常に弱いことは確かで、従って種子を生ずるのは正常的には閉鎖花によるものと考えられる」とある。私もそのように理解している。
 開花と言ってもほとんど開かない不十分な開花(図10の3番花)や水面から顔を出しても図10の4番花開かず、翌日には水没してしまったものはいずれも閉鎖花と判断しても良かろう。では、図11のような場合は閉鎖花なのか開放花なのか。

図10 3番花、4番花はいずれもこれ以上開くことはなく、翌日には水中に没してしまっていた。いずれも閉鎖花と考えられる
図11 この程度までしか開かなかったものは閉鎖花と言えば良いのか開放花と言えば良いのか迷うところである

 開花と言ってもほとんど開かない不十分な開花をすることも多い。
閉鎖花と開放花とは連続した状態と考えられるので、線引きをするのはかなり困難である。
 スミレ属等の閉鎖花(図11)と違ってオニバスの閉鎖花は、「開放花と構造の差がないので偽閉鎖花と呼ばれることがある」(森田 1995)
図11 イソスミレの開放花と閉鎖花

 いずれにしても蕾のうちに花粉を散らしているので、花粉を散らすことに関しては閉鎖花と開放花との違いは無い。
 
「開展花といえども絶対に完全種子を生ぜぬとは限らぬであろうが、少なくともその力が非常に弱いことは確かで、従って種子を生ずるのは正常的には閉鎖花によるものと考えられる」ならば、種子のでき方の違いはどこに起因するのだろうか。

オニバスは謎多き植物である。
 

文献
角野 康郎.1983.オニバスの自然誌 Nature Study 29:63-66.
      .1999. 日本水草図鑑:109.文一総合出版.
牧野富太郎.1954.牧野日本植物圖鑑:578.北驫ル.
森田 竜義.1995.週刊朝日百科植物の世界 受粉の合理化を極めた花たち
         :6-287.朝日新聞社.
岡田要之助. 1938. オニバスの開展花について. 生態学研究 4:159-163.
         オニバス文献集.
 

オニバスについての詳しいことは、「石川の植物修正版 オニバス(1)及びオニバス(2)」でご覧頂きたい。
 拙著「植物生態観察図鑑−おどろき編」(全国農村教育協会)では22頁にわたって解説してあるのでお読み頂ければ幸いです。


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