(mizuaoiの写真館改題)

(こちらは石川の植物の別館です)


植物生態観察図鑑 おどろき編
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第2弾 植物生態観察図鑑 ふしぎ編 初校返しました。年度内には完成するでしょう。御期待ください

 オウレンの性型については、植物図鑑では、雌雄異株とか、両性花と雄花とがあるなど、様々な記述があるが、実際の所は「両性花の株、雄株、雌株、両性花と雄花の混ざった株」が見られる。
 植物図鑑の記述を鵜呑みにするのではなく観察が重要である。
 オウレンの性型についても8ページにわたって詳しく解説。
 右の画像はオウレンの雌株。

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石川の植物


FILE55 テイカカズラ Trachelospermum asiaticum (Siebold et Zucc.) Nakai (キョウチクトウ科)

1 はじめに
 テイカカズラという名は、謡曲の「定家」に由来すると言われている。「平安時代の終わり頃、歌人として有名な藤原定家が後白河法皇の第三皇女式子内親王を慕っていたが、皇女は独身を守って49歳で病気のため亡くなった。それでもなお、皇女を慕った定家は蔦(つた)葛(かずら)となって、皇女の墓石にまつわりついた。皇女の霊が、蔦葛のまつわりつく苦しみを、旅の僧に訴える」という内容で、以後、この蔦葛のことを定家葛というようになった、とのことだ。(近田 1994、山田ほか 2005を参考にとりまとめた)
 

図1 大木から垂れ下がったテイカカズラ(2014年6月9日)
図2 満開のテイカカズラ(2006年6月10日)
図3 花弁はスクリューのように捻れている

2 花
 花冠は筒状で、先端部が5裂し、花弁がスクリューのように捻れている(図3)。花は甘くふくよかな芳香を発し、花冠ははじめ白く、後に淡黄色を帯びる。花を正面から見ると(図4)、花冠の中央に濃い黄色の箇所(副花冠)があり、花冠の中心に先端が白く尖った葯が存在し、花筒への5箇所の入り口(吸蜜孔)が黒く見えている。このパターンが蜜標となって送粉者を蜜のありかへ導いているのだろう。
 花冠の中央に、尖った葯の先端がわずかに見えているが、花の構造の詳細が分からないので花冠の一部をはがしたものが、 図5である。花筒上部のふくらんだところに、矢尻形の葯が入っているが、まだ雄しべ・雌しべの主要部分の様子が分からないので、花を全体にわたって縦断したのが図6である。
 子房は2個の心皮が合着しており、花柱も2個が合わさっており、花柱は先端部で太く達磨形になっている。葯は5個で、先端が合わさって尖り、最先端は白くなっている。

図4 花冠中央部の外観
図5 花冠の一部を取り除くと矢尻形の葯が見える
図6 花を縦に切断した図

 花筒上部のふくらんだ箇所を図解したのが図7である。
矢尻形の葯が集まって、尖った先端をもつ筒となり、内側に円錐形の空間を作る。この空間は、葯から放出された花粉が貯えられているので、貯粉室と呼ばれている。図7の花粉の下部で、尖った先端をもつ王冠のような形の部分が雌しべの先端部で、いかにも柱頭のように見え、古い書籍(拙著:知るほどに楽しい植物観察図鑑など)では柱頭と記述してあるものもあるが、柱頭ではないことが最近確認されている。
 真の柱頭の位置について矢追(2011)では、「寒天培地の上に雌しべを置き、その側のいろいろな場所に花粉を置いて発芽させてみる。花粉管が一直線に伸びて入っていくところが柱頭である。次に、柱頭に人為的に花粉をつけてみる。花粉が発芽して柱頭の乳頭突起の間に入っていく。」と観察されている。田中(2012)の表現を借りると「花柱の先端は太く達磨のような形になっており、達磨の頭部と腹部との間のくびれ部分が柱頭である。」とのことである。
 さて、テイカカズラの昆虫への花粉の受け渡しは巧妙を極めており、先達の導きがなければ理解が困難である。先の田中(2012)には、受粉の仕組みがダイナミックに記述されているので参考にされたい。

7 雄しべ・雌しべの先端部。花冠の一部と2個の雄しべを取り除いてある。毛束の上部で光っているのは、粘着剤としての粘液Bであり、毛束の下部で光っているのは柱頭の粘液(粘液A)である

3 花粉の受け取り
図8 受粉の過程を示すシミュレーション。黒線は昆虫の口吻を、灰色の塊は花粉を模したもの

 図8の黒い線は、吸蜜孔(図4参照)から花へ差し込まれた昆虫の口吻を模したものであり、途中に見える灰色の塊は口吻に付いた花粉の集団を模したものである。
@ 図8-1は、花粉を付けた口吻が吸蜜孔から入って蜜へ向かっているところである。
A 図8-2は、口吻が蜜へ到達した時の花粉の位置の想像である。
B 図8-3は、昆虫が口吻を引き抜きつつあるので、花粉の位置が上がっている。また、口吻を抜こうとすると剛毛によって、口吻が葯の隙間へ誘導され雌しべへ近づく。
C 図8-4は、花粉が柱頭の上の毛束に引っかかり、こそげ落とされて柱頭の周りの粘液Aに絡め取られている。
D 図8-5は、花粉を失った口吻が粘液Bに触れた後、貯粉室の花粉を新たに付けた様子である。
E 図8-6は、花粉を付けた口吻が葯の先端から出ていくところである。
 
以上は花粉の受け渡しを模式的に示したシミュレーション図であるが、後日出版される「植物生態観察図鑑−ふしぎ編」には実写の画像を加えて詳細に解説するのでご期待頂きたい。

4 果実と種子
 花は6月に見られるが、果実が熟するには、その後約半年を要し、種子が散布されるのは12月になる。12月中旬、ちょうど種子を散らせているところに出会った。種子は大型で重いので、数百本の毛(種髪)にも係わらず、かなりの急角度で滑るように落ちて来た。同じキョウチクトウ科のガガイモの種子も種髪をもつが、ガガイモに比べて種子本体が非常に大型であるので、微風程度では風に漂うというわけにはいかないのだ。入手できた16個の種子で重さを測定したところ、平均値で、種子本体:36mg、種髪:4mg であった。
 ウバユリの種子1000個での平均値2.8mgと比べて、相当重いものであった。 
 種子に付く白色長毛は、タンポポなどの果実に付く冠毛と違って種子に付くので種髪とよばれる。種髪を60倍の実体顕微鏡で観察すると、管のように思えたので、色素液に浸けた結果、管であることが確認できた(図12・13)。種子が大型で重いぶん、種髪を管(中空)にして軽くしているのだろう。さらに倍率を上げて種髪を観察したところ、壁の厚みが所々で変化しており(図14)、弱いくせ毛構造であることが分かった。種髪がパラシュートのようにふんわりしているのは、天然パーマのせいであったようだ。

図9 未熟の果実 図10 完熟果実 図11 散り始めた種子
図12 テイカカズラの種子。スケールはmm
図13 管になった種髪の断面 図14 色素を吸った種髪 図15 種髪は捻れている

5 虫えい
 10月のある日、通常の果実に混じって虫えいが見つかった(図16)。本来は2個の細長い果実がV字形に開くのに、先端でくっついたまま離れず、不規則に丸まっていた。この虫えいは、テイカカズラミサキフクレフシ(定家葛実先膨附子)と呼ばれる。切り開いたところ、多数のテイカカズラミタマバエ(Asteralobia sp.)の幼虫が入っていた(図17)。湯川(1996)によると、これは3齢幼虫で、虫えいから脱出後に地中で繭(まゆ)を作り越冬するとのことである。


図16 テイカカズラの虫えい(テイカカズラミサキフクレフシ)
図17 虫えいの住人(テイカカズラミタマバエの幼虫)

 6 文献
近田文弘. 1994. 週刊朝日百科 植物の世界(27):3-93.朝日新聞社.
田中 肇.
2012. 花たちの知恵(22)繁殖のための工夫を見る 22 テイカカズラ.Makino 94:18.牧野植物同好会会誌.
山田卓三ほか. 2005. 万葉植物事典:366−367.北隆館.
湯川淳一・
桝田 長 編著.
1996. 日本原色虫えい図鑑:278.全国農村教育協会.


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