(mizuaoiの写真館改題)

(こちらは石川の植物の別館です)


植物生態観察図鑑 おどろき編
全国農村教育協会発行の植物生態観察図鑑シリーズ第1弾 好評販売中です。

第2弾 植物生態観察図鑑 ふしぎ編 
御期待ください


 オウレンの性型については、植物図鑑では、雌雄異株とか、両性花と雄花とがあるなど、様々な記述があるが、実際の所は「両性花の株、雄株、雌株、両性花と雄花の混ざった株」が見られる。
 植物図鑑の記述を鵜呑みにするのではなく観察が重要である。
 オウレンの性型についても8ページにわたって詳しく解説。
 右の画像はオウレンの雌株。

など、どんな類書にもない新情報が写真607枚、192ページに納められています。

 

  価格は2,950円+消費税 です。割引価格でご購入を希望される方は、著者宛に直接メールでご希望をお伝え下さい。

石川の植物


44 ヤドリギ Viscum album L. subsp. coloratum Kom.
             Santalaceae(ビャクダン科)

 ヤドリギについては、もとはHP「石川の植物」ですが、その内容を発展させて拙著「植物生態観察図鑑−おどろき編」(全国農村教育協会)で写真44コマを使い13ページにわたって記述いたしました。このたびの修正版は両者を参考にして取りまとめたものであります。機会がありましたら、「植物生態観察図鑑−おどろき編」をお読みいただければ幸いです。

 ヤドリギは、北海道から九州まで広く分布します。石川県では方々で見られますが、あまり多くはありません。しかも木の高いところに付いていることが多く、観察は困難です。
 白山麓では、ミズナラやブナに寄生しているのを見ることができます。春早く訪れると、枝が落ちていることがあります。そういう枝では、果実と同時に花を見ることもできます。
 果実は晩秋に熟し、直径約6〜8mmの球形で半透明の黄白色です。ヒレンジャクなどの鳥が好んで食べるということですが、種子を取り巻く粘液質は、消化管を通っても粘着性が失われないので、種子を含んだ粘着性のある糞となり、木の幹や枝に貼り付くことによって分布を広げます(NHKによって、そのようすが記録されています)。
 ヨーロッパではセイヨウヤドリギですが、クリスマスのリースなどに利用されています。落葉樹が葉を落としている冬に、ヤドリギだけが地に根も付けないで、青々とした葉をつけていることに生命力を感じ、神聖視されているのでしょう。宗教的な意味もあるようですが、ここでは省略いたします。

 日本でも古くから人々に知られており、古名で「保与」(ホヨ)として、万葉集にも出ています。

  あしひきの山の木末のほよ取りて
     かざしつらくは千年(ちとせ)寿(ほ)くとそ
                    大伴家持(巻18-4136)
【山の木の梢のヤドリギを取って髪にさしたのは、いつまでも限りなく無事であるようにと、祝い願う気持ちからなのだ】。(万葉植物事典)
 枕草子でも37に「宿り木といふ名、いとあはれなり」と表現されています。
 

図1 落葉した木(ブナ)では一見、鳥の巣のように見える(2009.11.24)

 ヤドリギは寄生木や宿木とも書きます。名は体を表すというように、寄生性の樹木です。
 エノキ、ケヤキ、ブナ、ミズナラ、クリ、サクラ、ナシなどの落葉樹に寄生する常緑の小低木なので、冬でも青々として生命力を感じます。ヤドリギを探すのは、宿主(または寄主)の落葉樹が葉を落とした冬が適しています。一見、何かの鳥の巣を思わせる大きなまるい塊になって、宿主の木の幹や枝に付いているので、あればすぐ見つかります。

図2 ミズナラの枝に寄生したヤドリギ(2004.4.29)

 葉緑体をもっているので光合成はできますが、なにしろ、木の幹に生えているので、水分や無機塩類などは、宿主の植物から吸収しなければ生きていけません。このような生活を、半寄生と言います。寄生されたところより先は、根からの栄養分が十分送られなくなり、図3のように細くなったり、弱ったりして折れてしまっていることもあります。また、図4のように寄生された箇所が瘤のように大きく膨らむことがしばしば見られます。

図3 ヤドリギの寄生した箇所より先の枝(幹)が失われていることがある
図4 ヤドリギの寄生した箇所はこぶのようになる。このように大きな瘤になったときは、多数のヤドリギが寄生している。(2004.4.29)

 ヤドリギの茎は、多くの場合、二又に枝分かれしつつ、1年に1節ずつ伸びていくので、その節の数を数えるとおよその樹齢が分かります。葉はプロペラのように対生し、古い葉は落ちてしまい、茎の先端部だけに残り、茎の先端に花序がつきます。雌雄異株で、花序には1〜3個の花がつきます。図6や図7で花序の下に見える小さな緑の芽は、これから伸びようとする新しいシュートの始まりです。

図5 ヤドリギの茎の先端部。雌株(2012.12.10)
図6 雄花。4枚の花被からできている。スケールはmm(2008.4.16) 図7 雌花。スケールはmm(2008.4.16)
図8 雄花・雌花を上から見た
図9 雄花の縦断面。花糸はきわめて短く、葯は花被の内側
に張り付いている(2005.5.6)
図10 雌花。手前の花被片を1枚外した。花被と花柱の間には蜜(?)が分泌されている
図11 果実。4個の褐色部分は、花被裂片の落ちた跡。中央の褐色部分は、柱頭の跡。この果実では胚軸が2個見えている(2005.5.8)

 ヤドリギの種子では、果実のうちから根のようなものが見えています。秋の内は小さな突起に過ぎないのですが、春になるとかなり伸びています(図11)。これは、果実の外からでも透けて見えるもので、図43以降で説明しますが、これが2個あるものは胚が2個、すなわち2個の種子からなる果実で、3個あるものは3個の種子からなる果実です。
 では、この根のように見えるものは何かということになりますが、図説植物用語事典(p.246)によりますと、「種子は発芽しても主根は伸長せず、まず、胚軸の下部が吸盤状に変化し、固着する。ついで、そこから不定根を生じて樹皮内に進入し、(後略)」とありますから、「胚軸」とよぶべきもののようです。

図12 ヤドリギの果実。種子は粘液質に包まれている 図13 ヤドリギの種子。果実の中で、すでに胚軸が伸び出していた
図14 ヤドリギの果実。2個の胚軸が透けて見える 図15 ヤドリギの種子。この種子では2個の胚が合体しているので胚軸が2個見えている
図16 垂れ下がったヤドリギの種子(2005年5月8日)
図17 5月6日に採取した種子のいくつかをスライドガラスに付着させた。5月30日になっても元気だ
図18 水分のないスライドガラスの上で、7月11日になっても元気だ
図19 10月5日には完全に枯れてしまっていた。数ヶ月もスライドガラスの上で生きていた

 5月6日に採取した種子のいくつかをスライドガラスに付着させました。図18のように2ヶ月経っても元気で、いつ枯れたのかははっきりしませんが10月5日には完全に枯れてしまっていました。その生命力の強さには驚きました。宿主の樹皮についてから寄生根を出して宿主の維管束まで延ばして栄養分を吸収できるようになるまでは相当の月日が必要なんでしょう。それまでの間、生き抜けるよう、強い生命力を保っている驚異の植物です。

図20 ヤマボウシに寄生させたヤドリギ(2005.7.5) 図21 ヤマボウシに寄生させたヤドリギ(2005.7.22)
図22 ヤマボウシに寄生させたヤドリギ(2005.10.5) 図23 ヤマボウシに寄生させたヤドリギ(2005.12.27)
図24 ヤマボウシに寄生させたヤドリギ(2007年12月26日)。図23の個体の2年後の姿。成長していないし、枯れてもいない。驚異の生命力だ

 5月初旬、果実の中ですでに発芽していたヤドリギの種子のいくつかを庭のヤマボウシ・ハウチワカエデ・エゴノキに付着させました。ほとんどは落ちたり、途中で枯れたりし、活着するのはなかなか難しそうでしたが、いくつかは生き残りました。もっとも全部が寄生に成功すればヤドリギだらけになってしまって、宿主も枯れて共倒れになるでしょうからやむを得ません。
 時々写真にとって観察しましたが、この1年間は、ほとんど変化が見られませんでした。外見では変化が無くても、おそらく、宿主の中へ寄生根を差し込んでいるのでしょうが、確かめる術(すべ)はありません。
 その後もほとんど成長が見られませんでした。2年後の2007年12月26日に撮影した図24を見ても、この2年間に全く成長していません。ヤマボウシやエゴノキは、本来の宿主ではないので成長しないのかも知れません。かといって、枯れたようにも見えません。宿主の中へ寄生根を差し込んでいるのでしょうか。不思議な生命力をもつ植物です。
ヤドリギの種子の粘着について
 ヤドリギの種子は、木の幹や枝に貼り付くことによって分布を広げますが、貼り付きの仕組みはどのようになっているのでしょうか。まだ謎の部分が多いのですが、観ていくことにしましょう。
 なかなか さんの観察によると、果実の中は、果肉、種子の周りの粘着質、白い筋のような部分と種子本体からなっているようです。図16・31で長く垂れているのが「白い筋のような部分」で、種子の周りにあるのが「粘着質」部分です。
 ヤドリギの果実を食べた鳥の総排泄口から、「白い筋のような部分」で垂れ下がり、運良く幹や枝に触れると、「粘着質」部分で宿主に貼り付いて寄生を始めるのです。

 なかなかさんの「ヤドリギの果実」というFILE(ここを参照を後追いしながら観察してみました。後追いというのは、観察ポイントがはっきりして楽です。

図25 果皮を通して見える白い筋が、緑の線で囲った種子の平べったい面と直交する方向に付いている 図26 果皮を剥がすと、白い筋がはっきり見えてくる