(mizuaoiの写真館改題)

(こちらは石川の植物の別館です)


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 オウレンの性型については、植物図鑑では、雌雄異株とか、両性花と雄花とがあるなど、様々な記述があるが、実際の所は「両性花の株、雄株、雌株(希)、両性花と雄花の混ざった株、両性花と雌花の混ざった株(希)」が見られる。
 植物図鑑の記述を鵜呑みにするのではなく観察が重要である。
 オウレンの性型についても8ページにわたって詳しく解説。
 右の画像はオウレンの雌株。

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石川の植物


135 ミソハギ
Lythrum anceps (Koehne) Makino
 Lythraceae(ミソハギ科) 

図1 ミソハギの群生(2015年8月28日)

1 ミソハギとは ?
 ミソハギ科の多年草。夏の日、水辺で花を咲かせます。ちょうど旧暦のお盆の頃に咲き、仏前に供えられるのでボンバナ(盆花)とも呼ばれています。永益(1995)には、「聖霊棚(しようりようだな)(著者注:精霊棚の誤記か)に水をかけるのに使われるので、ショウリョウバナ、ミズカケグサという別名もある。和名も水をかける姿が『禊(みそぎ)』を連想させ、花の咲く様子がハギに似ているのでミソギハギとよばれ、それが変化したものという」と記述されています。

2 ミソハギの花には三つの型がある(異形ずい性)
  雌しべの長さと雄しべの長さの関係から三つの型があります。すなわち、雌しべの長さに、長・中・短があり、雄しべの長さにも長・中・短の3種類があります。

図2 雌しべの長さの違いが分かりやすいので、それぞれ長花柱花・中花柱花・短花柱花とよばれる
図3 それぞれの型の花の縦断面

 さて、図2は、それぞれの型の花をアップにしたものですが、野外で花を漠然と見ていたのではその違いは分かりません。ルーペを使って拡大しないと分かりづらいので、その違いに気づいていない人が多いと思います。
 ミソハギの雄しべは12本あり、一つの花には長・中・短のうちの二つの型が6本ずつあります。図3で見るように雌しべの柱頭と雄しべとの位置関係に注目し、これらの位置関係が把握できるようになっていれば、ルーペを使わなくても野外で3つの型を識別できるようになります。

すなわち、
  長花柱花:柱頭が長く突出し、雄しべは花の喉部に集まっている
  中花柱花:長い雄しべが突出し、柱頭が花の喉部に見える
 短花柱花:長い雄しべが突出し、喉部に短い雄しべが見え、柱頭は見えない


私が実験的に確かめたことではないのですが、異なる型の花の花粉でなければ種子ができないのだと言われ、それは、近親結婚を防ぎ子孫の遺伝子構成を多様にするためと考えられています。ある時疑問が浮かびました。柱頭が奥の方にある短花柱花では、柱頭が奥にありすぎて雌しべへ花粉が運ばれないのではないか? ということです。
 そこで、それぞれの花で、雄しべと雌しべの位置関係を比べてみると、長花柱花や中花柱花の短雄しべの葯の位置に、短花柱花の雌しべの柱頭のあることがわかりました。(図3)
 これなら、長花柱花や中花柱花の短雄しべの花粉を付着させた昆虫なら、短花柱花の柱頭へ花粉を渡すことができるはずですね。

雄しべの位置と送粉の関係を中花柱花へ来た昆虫を例に説明したのが、図4です。
すなわち、中花柱花(図4の中段の図)へ来た昆虫が、緑で示した長雄しべ群の花粉と、黄で示した短雄しべ群の花粉を体に付けた場合には、別の中花柱花へ行っても柱頭の位置が合わないので花粉を渡すことが難しいのですが、長花柱花へ行った場合には緑で示した長雄しべ群の花粉を渡すことができ、短花柱花へ行ったときには黄で示した短雄しべ群の花粉を渡すことができるようになっています。そういう受粉可能な花粉のやり取り(適法受粉)を模式的に示したのが、図5です。
 したがって、同じ型の花からの花粉を受け取らないが、異なる型の花の花粉を受け取る仕組みができあがっていることになります。しかし、それは理論上のことであって、実際には短雄しべの花粉が長い雌しべや中ぐらいの雌しべに付くこともあり得るはずです。そのときはどうなるのでしょうか。
 

図4 中段の図の青直線を中花柱花に来た昆虫
の体とすると、体の前部に付いた黄色い花粉は
短花柱花の柱頭に受粉しやすく、体の後部に付
いた緑の花粉は長花柱花の柱頭に受粉しやすい
図5 適法受粉を示す模式図

 三型花の受粉については、1876年にダーウィンの詳細な研究があり、和訳としては「花のかたち 訳 石井友幸 1950年 改造社」が過去に出版されていますが現在では入手困難です。さいわい、フィールドウオッチング(北隆館.1991)に一部が紹介され、著者(建部民雄)の実験結果も報告されています。ダーウィンの著書よりは入手しやすいので、関心のある方はごらん頂きたいのですが、結論としては同じ型の花の花粉が付いたときには、結実が極めて悪いことが示されています。また、長花柱は長雄しべで、中花柱は中雄しべで、短花柱は短雄しべで受粉した方が、すなわち、図5の → で示したような受粉になったときが、結実率のよいことも示されています。これを適法受粉とよびます。

 ミソハギは三型花ですがハクサンコザクラのように雌しべや雄しべの長さに、それぞれ長・短の2種類をもつ花は二型花とよばれます。さて、二型花と三型花とはどのような意味の違いがあるのでしょうか。

図6 ハクサンコザクラの長花柱花 図7 ハクサンコザクラの短花柱花

 すべての型の花が同数ずつあると仮定した場合、三型花では、例えば中花柱花を訪れた昆虫が、次に異なる花柱をもつ花、すなわち、長花柱花あるいは短花柱花を訪れる確率は2/3となります。二型花では、長花柱花を訪れた昆虫が、次に短花柱花を訪れる確率は1/2となります。よって、確率だけからいえば、三型花の方が受粉にとって優れているということになるでしょう。

3 ミソハギの謎
 ミソハギには、謎があります。 長雄しべの花糸は紅紫色で花粉が緑色で、中雄しべと短雄しべの花糸は白色で花粉が黄色なのです。これがどういう意味を持つのか、今のところ不明です。さらに付け加えると、緑の花粉の方が大きいのです。さらに謎が増えました。
 なお、同じく黄色の花粉でも、中雄しべの花粉と短雄しべの花粉の大きさにはごくわずかの差がありましたが、ここでは図示しませんでした。

図8 短花柱花の側面観。緑色の花粉をもつ長雄しべが6個、黄色の花粉をもつ中雄しべが6個見える。雌しべは萼筒の中に隠れている
図9 中花柱花における長雄しべの花粉(緑色)と短雄しべの花粉(黄色)。スケールは0.01mm

文献
 建部民雄、田中 肇. 1991.フィールドウォッチングC夏の野山を歩く:36-39.北隆館.
 永益英敏.1995.週刊朝日百科 植物の世界(44):226.朝日新聞社.
 米倉浩司.2012.日本維管束植物目録:143.北驫ル.


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