(mizuaoiの写真館改題)

(こちらは石川の植物の別館です)


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 オウレンの性型については、植物図鑑では、雌雄異株とか、両性花と雄花とがあるなど、様々な記述があるが、実際の所は「両性花の株、雄株、雌株、両性花と雄花の混ざった株」が見られる。
 植物図鑑の記述を鵜呑みにするのではなく観察が重要である。
 オウレンの性型についても8ページにわたって詳しく解説。
 右の画像はオウレンの雌株。

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石川の植物


124 サンショウモ
   Salvinia natans(L.) All.
  SALVINIACEAE サンショウモ科)

 サンショウモは、サンショウ(山椒)の葉に似た一年生の浮遊性水生シダで、私の高校生の頃は山間地の田圃に浮かんでいるのを良く見た記憶がありますが、最近ではほとんどお目にかかることが無くなりました。環境庁編のレッドデータブックでは、絶滅危惧2類(VU)で、平均減少率は約60%、100年後の絶滅確率は80%以上といわれています。石川県でも、絶滅危惧1類となっています。サンショウモの成長・繁殖はめざましく、条件が良ければすぐに水面全体に広がるくらいのものですが、水草の多くがそうであるように、田圃が宅地に変わるとか休耕田になるとか、池沼が開発されるとか、農薬の流れ込みなどによって簡単に滅びていってしまいます。
 友人のOさんから、長年栽培していたサンショウモの一部を譲り受け観察をしております。


図1 葉はよく水を弾く(2006年10月21日)
図2 水中葉(水中にあって根のように見えるものは水中葉とされている)と胞子嚢果(2005年11月12日)
図3 サンショウモの葉の表面の毛 図4 オオサンショウモの葉の表面の毛

 浮葉は幅1cmほどの単葉で、対生してサンショウの葉のように見えます。水中には、根のようなものが垂れていますが、植物の世界(朝日新聞社)では、「解剖学的な観察からは根ではないことが確かめられた。葉であるという意見と、枝(茎)であるという意見が提唱されているが、結論は出ていない。」とあります。日本の野生植物(平凡社)では、「葉は3列輪生、内2列は水面に浮葉となり、あとの1列は水中に沈む水中葉となる。」と記載されています。それとは別に、多細胞の毛も生えています。
 サンショウモは沈めても沈めても浮き上がり、表面が濡れないのですが、その理由の一つに、葉の表面に生えている毛があるようです。『「泡立て器」のような形の多細胞の毛があり、空気との接触面をふやして水をはじく役割をしている。』(植物の世界)とのことです。
 この毛は、外来種のオオサンショウモでは更に著しく、まさに「泡立て器」のような形となっています。

図5 元の方の1個が大胞子嚢果で、ほかの数個は小胞子嚢果

 それぞれの節に数個の胞子嚢果が付きます。胞子嚢果とは、袋状の構造で、その中に多数の胞子嚢が入っているので、胞子嚢を種子に見立てるとそれを入れる袋は果実のように見えることから「胞子嚢果」とよばれると解釈すると分かりいいでしょう。胞子に大小の区別がある場合には、胞子嚢にも大小があり、胞子嚢果にも大小の違いがあることになります。図5の左は胞子嚢果が未だほとんど破れていない状態です。この外見では大胞子嚢果か小胞子嚢果かの区別は付きませんが、茎に一番近いのが大胞子嚢果です。

図6 胞子嚢果と胞子嚢。包膜が破れて胞子嚢がこぼれようとしている
図7 1個の大胞子嚢果の中の大胞子嚢(スケールは0.1mm)
図8 大胞子嚢(大)と小胞子嚢(小)の大きさの比較
図9 1個の小胞子嚢果の中の小胞子嚢。多すぎて数えられない(スケールは0.1mm)
図10 小胞子嚢には糸状の柄が付いている
図11 小胞子嚢の切断面

 胞子嚢果はほぼ球形で、表面に多細胞の毛があります。また、包膜は二重膜構造で、たくさんの気室があって、浮力を保っているのではないかと考えられます。
 大胞子嚢果には多数の大胞子嚢が入っています。試みに数えたところ、27個ありました(図7)。小胞子嚢果には更に多数の数え切れないくらいの小胞子嚢が入っています(図9)。大胞子嚢には短い柄があり、「大胞子母細胞は8個つくられるが、成熟する大胞子は1個だけである」(日本の野生植物)とありますから、その中には1個の大胞子しか入っていないことになります。小胞子嚢には糸状の柄があります。この柄が、一見、発芽した根のように見えることから、小胞子嚢を胞子と勘違いすることがありますが、柄があることが、まさに胞子ではなく「胞子嚢」であることの証です(図10)。小胞子嚢には64個の小胞子があると聞きましたが、そこの観察は未だできておりません。小胞子嚢を切断してみると、いくつかの部屋になっているようです。これが胞子そのものであるのかどうかは、私の観察眼では、どうにもはっきりいたしません。しかし、このような構造があることからしても、一見、胞子ふうのこの小体が胞子(単一の細胞)でないことは分かります。
 1月初旬、室内のシャーレの中に数十個の緑色のものが浮かんでいるのに気づき、顕微鏡で観たところ、はやくも、若いサンショウモ(胞子体)が育っていました。「水生シダは生きる」には、4月末頃には胞子体が出現するとありました。シャーレを見ると、朽ちたサンショウモの本体にくっついたままの大胞子嚢果が幾つか見られたので、観察してみると、まさに発芽しかけのものがありました。包膜越しなので、ベールが掛かったようになり(図14)、鮮明な観察が困難なので、包膜を取り外して観察することにしました。それは、エイリアンの孵化のような光景でした。(図12〜15)

図12 大胞子嚢果の包膜をはがして観察(2007年1月29日)
図13 発芽しつつある大胞子嚢(2007年1月29日)
図14 前葉体が顔を出してきた。褐色の点は造卵器らしい(2007年1月30日)
図15 前葉体が現れてきた(2007年2月6日)
図16 すっかり前葉体らしいものができてきた(2007年2月7日)
図17 前葉体の全形(2007年1月18日)
図18 前葉体には造卵器が付く

 ゆっくりと前葉体(配偶体)が発達してきました。表面には、不規則に褐色の点が見えますが、造卵器でしょう。
 前葉体上に若いサンショウモ(胞子体)が育ったということは、小胞子から精子が出て、受精したはずなのですが、精子自体は非常に小さく、観察は困難としても、精子を出したような気配のある小胞子嚢が見つからないのが解せません。野外では、4月が発生の時期ですから、そのころに観察をすればもう少し、分かるのかも知れませんが。

図19 第一葉
図20 本葉
図24 次々と葉が互生で出てくる

 前葉体から育った最初の植物体は、「第一葉」と呼ばれ、ヒツジグサのような切れ込みのある葉です。この葉の裏側から、「本葉」が伸び、更に次々と葉が伸びてきますが、このころの葉は、成熟したサンショウモと異なり互生しています。葉の裏や茎には多数の「多細胞の長い毛」が密生しています。葉の表には、そのような毛はありませんが、最初に見た「泡立て器」のような形の毛の初期の姿を見ることができました。こんな小さい内から、葉の表面は水をはじき水面に浮いています。

 第一葉の表面には気孔が沢山見られましたが、裏面には見られませんでした。本葉では、気孔がはっきりしませんでしたが、小さな穴がありました。これが気孔かも知れませんが、今のところ不確実です。

図25 第一葉の表面 図26 第一葉の表面の気孔
図27 第一葉の気孔の拡大 図28 本葉の表面にある気孔?
図29 茎に生えた毛
図30 茎に生えた毛
図31 茎に生えた毛

 今後の課題は、小胞子嚢から、どのように胞子が出、精子が放出されるのかの観察ですが、そう簡単に確認できる自信はありません。気長にお待ち下さい。

オオサンショウモ
  近年、ホーセンターではメダカなどの産卵用にオオサンショウモが販売されています。石川県の野外では越冬できないので、冬は室内(加温なし)に取り込んでいますが今日(2月12日)現在は未だなんとか枯れないでいます。若い葉はサンショウモに似た形です(図32)が、成長した葉は大きくうねります(図33)。
 両者の識別点は葉の表面にある毛で、図4にあるようにオオサンショウモではまさに「泡立て器」のような形をしております。胞子嚢果の様子も大きく異なります。サンショウモの胞子嚢果は図2・5・34左のように水中葉の根元に塊となって付いていますが、オオサンショウモでは数珠つながりになっています(図34右)。

図32 若い時期のオオサンショウモの葉
図33 良く育って独特のうねった葉になったオオサンショウモ
図34 胞子嚢果の付き方の比較
図35 オオサンショウモの胞子嚢果
図36 オオサンショウモの大胞子嚢果の縦断面(図37と同倍率)1個の大胞子嚢にはおそらく1個の大胞子が入っているはず(2019年2月12日)
図37 オオサンショウモの小胞子嚢果の縦断面(図36と同倍率)。1個の小胞子嚢の中には多数の小胞子が入っているはず(2019年2月12日)

文献
 
長谷部光泰.1996.週刊朝日百科 植物の世界:12-7.朝日新聞社.
 石川県絶滅危惧植物調査会.2010.改訂・石川県の絶滅のおそれのある野生生物 いしかわレッドデータブック〈植物編〉2010:66.石川県.
 環境省編.2015.Red Data Book 2014 8 植物T(維管束植物) 日本の絶滅のおそれのある野生生物:370.ぎょうせい.
 白岩卓巳.2000.絶滅危惧植物 水生シダは生きる:3-37.自費出版.

 米倉浩司.2012.日本維管束植物目録:16.北驫ル.


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