(mizuaoiの写真館改題)

(こちらは石川の植物の別館です)


植物生態観察図鑑 おどろき編
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 オウレンの性型については、植物図鑑では、雌雄異株とか、両性花と雄花とがあるなど、様々な記述があるが、実際の所は「両性花の株、雄株、雌株(希)、両性花と雄花の混ざった株、両性花と雌花の混ざった株(希)」が見られる。
 植物図鑑の記述を鵜呑みにするのではなく観察が重要である。
 オウレンの性型についても8ページにわたって詳しく解説。
 右の画像はオウレンの雌株。

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石川の植物


109 クロモ
Hydrilla verticillata (L.f.) Royle
         Hydrocharitaceae(トチカガミ科) 

図1 側溝に繁茂したクロモの雄株(2000.8.25)。すでに側溝掃除で失われてしまった

 私たちの身近には、似たような「水草」として、クロモ、オオカナダモ Egeria densa Planch.、コカナダモ Elodea nuttallii (Planch.) St. John. の3種があります。
 それぞれ別の属であり、確かに異なるのですが、栄養状態によっては紛らわしい育ち方をする場合もあります。
 クロモは、かつては各所の水路にあって、学校教育の場では、原形質流動の観察や光合成の実験にも使われたものですが、今ではすっかり少なくなり、「絶滅危惧2類(石川県)」にランクされるまでになってしまいました。

 2000年、勤務先の近所の3面コンクリート張りの側溝で「クロモ」らしきものを発見して喜んだのですが、絶対にクロモであるという自信のないまま、無責任にも「クロモ」だと公言し、水槽に入れて育てていました。2004年の8月、栽培水槽に多数のゴミのようなものが浮かんでいるのに気が付きました。実体顕微鏡で観ると、それが「クロモ」の雄花でした。(図2)


雄花
図2 水面に立つ2個のクロモの雄花(おばな)。実物の直径は約2〜2.5mm。水面の丸い玉は花粉
図3 水面に立ち上がる雄花 図4 雄花を真上から見た。雄しべは3個で、それ
ぞれ2個の葯室からなる。葯室は側面で大きく開
いて花粉を放出する
 クロモの雄花は、萼片3、花弁3、雄しべ3からなり、植物体から離れて水面で開花します。
 萼と花冠が反り返って、水面に立ち上がり、花粉を放出し、わずかの風でも水面をするすると移動できます。萼片は特に大きく、お椀のようにくぼんでいて、くぼんだ面を外側に向けて、水面に立っています。花弁は細い棒状で、反り返っています。
 萼片・花弁・雄しべの構造は、顕微鏡で見る時はかなり鮮明に分かりますが、いずれもほとんど透明に近いので、写真では分かりづらいのが難です。ものの本には、「花弁は淡紫色」(日本の野生植物)とか「がく片、花弁ともに淡紫色」(野草図鑑)等と記載されていますが、私の観察したクロモでは、「葯だけが淡紫色」(図2)でした。
図5 開花し、葯が開き始めたところ
(9月23日13時54分50秒)
図6 右上の葯が花粉を放出した
(9月23日13時54分54秒)
図7 左上の葯が花粉を放出した
(9月23日13時55分0秒)
図8 下の葯が花粉を放出した
(9月23日13時55分4秒)
 たくさんの雄花を見ることができましたが、いつ見ても花粉を放出済みのものばかりでした。ある日、例によって撮影していますと、何か視野の片隅に動くものが見えました。瞬間、雄花が浮かび上がってきたと直感して、そちらへレンズを向けますと、今まさに浮かび上がった雄花が花粉を放出しているところでした。見る見るうちに、次々と葯が裂開していきました。
 リングストロボを使い、絞りをF22まで絞って撮影していました。水面の反射の影響でカメラの向きによって明るさが変わるので、撮影のつど試し撮りをしながら露出補正をしていたのですが、急なことで試し撮りをしている暇がなく、極端に露光オーバーな画像になってしまいましたが、葯が順々に開いていくことだけはお分かり頂けると思います。なにしろ、たった14秒間のできごとでした。

開花も面白いのですが、蕾?も傑作です。
 雄花は葉腋にある「苞鞘(ほうしょう)」というものに収まっています。苞鞘は球形でトゲトゲです。(図10)この中に蕾が1個入っています。開花時には、苞鞘が裂け、雄花が水面に浮き上がります。でも、この瞬間を撮影できるのはよほどの偶然か、よほどの暇人(いえ、熱心な人)だけでしょう。なにしろ、何時、浮かび上がってくるか、分からないのですから。

図9 雄花は葉腋に付く苞鞘の中にある 図10 苞鞘は突起部を除き直径約2..2mm
図11 苞鞘の中には1個の雄花がある 図12 雄花を放出した後の苞鞘

雌花
 クロモの雌花は雄花とはまったく異なります。雌花の開花の瞬間は未だ実見していませんが、蕾の時期に水中では、花の部分に気泡が付き、まるで、気泡が雌花を水面へ誘導するかのように見えます(図13)。
 雌花も萼片3、花弁3からなり、半透明で目立たず、ほぼ似たような形なので紛らわしいが、へら形で幅広いのが萼片で、線形で細いのが花弁です。写真では不分明ですが、柱頭は3裂しています。雌花は、葉腋につき、子房が長く花柄状に伸びて、水面に半ば水没するような形で開花します。こうすれば、水面を流れてきた花粉が、花被(萼・花冠)の隙間から雌しべに到達するのに都合がよいことになり、このような受粉の仕方を「
花粉水面媒」といいます。

図13 気泡に誘導されるように伸びていく雌花の蕾
図14 雌花。半透明の萼片3,花弁3をもち、柱頭は3裂。半ば水没するが、表面張力によって、花の中へは水がほとんど入っていない。(2006年9月17日)

 このような 半ば水没状態の雌花ですが、表面張力の影響で、水は花の中へほとんど入っていないので、花粉が雌しべに到達することができないと考えていましたが、図15を見ると、赤いゴミが萼片や花弁の上に見えることから、花の中心部はわずかに濡れている模様です。図16は、両側に雄花が接触した雌花ですが、花の中心部の色が少し濃く見えています。そこまで水に浸っているからで、雌しべの近くには5個の花粉も見えています。すなわち、花の中心部へは、多くはないが、花粉の流れ着くことが分かります。花粉水面媒であることは言えると考えられます。
 花粉をまき散らすだけなら、雄花が水面に立ち上がらなければならない理由はないはずです。水面に立ち上がった雄花は、わずかの風でも、水面をするすると移動するので、移動して雌花にぶつかったときに、葯に残っていた花粉を雌花へ振りかける狙いがあるのでしょう。前述したように、雌花の中心部は,あまり水に濡れていないので、水面を流れてきた花粉が柱頭に付く機会はそう多くないと考えられるからです。
 結局、@飛散した花粉が直接雌しべに付く 
     A水面を流れた花粉が雌しべに付く 
     B雄花で運ばれた花粉が、雄花が雌花にぶつかった際に直接雌しべに付く 
の3通りの受粉方法をもつものと考えています。
 しかし、果実(種子)は未だ見たことがありません。もっとも丁寧に探そうとしたこともありませんが。
日本水草図鑑には「クロモには、雌雄異株の系統と雌雄同株の系統とがあり、雌雄異株の系統が全国的に分布するのに対し、雌雄同株の系統はおもに西日本に分布する。また、染色体において2倍体(2n=16)と3倍体(3n=24)があり、2倍体の雄株と雌株が混生している場合しか結実は起こらない。」ということが述べてありますから結実を見るのは難しそうです。

図15 赤いゴミが、花の中心部へ入っている 図16 雌花の中心部に花粉が5個付いている

文献
石川県絶滅危惧植物調査会.2010.改訂・いしかわレッドデータブック
〈植物編〉2010.石川県.
https://www.pref.ishikawa.lg.jp/sizen/reddata/rdb_2010/data/documents/kuromo.pdf
角野康郎. 1999. 日本水草図鑑:.25〜28.文一総合出版.
長田武正. 1988. 検索入門野草図鑑 1 つる植物の巻:160〜161.保育社. 
長田武正. 1990. 原色日本帰化植物図鑑:398〜399.保育社.
山下貴司. 1982. 日本の野生植物 1:5〜6. 平凡社.


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