(mizuaoiの写真館改題)

(こちらは石川の植物の別館です)

私の基本ホームページ「石川の植物」の別館が、現在閲覧不能になっております。ここには石川の植物のFILEの8割ほどが入っているので大変困った状態になっております。そこでこの際、閲覧不能のFILEを改訂してアップし直すことにしました。

101 デンジソウ(1)  Marsilea quadrifolia L.

 漢字で書くと「田字草」、名は体を表すといいますが、実に良くできた名前です。四つ葉のクローバー型といってもよく分かると思います。
 属名の Marsilea はイタリアの自然科学者(L. マルシーリ)を記念したもので、種形容語(種小名)の quadrifolia は「四葉の」の意味です。一見普通の水草ですが、なんとシダの仲間だというから驚きです。(夏緑性多年草)
 環境省編の2014年版レッドデータブックには土地造成、農薬汚染、湿地開発などが減少の主要因とされ、絶滅危惧U類に選定され、100年後の絶滅確率99%と記載されています。
 石川県でも、かつて、加賀地方で野生が知られていたものですが、最近は生育状況についての報告が無く、現状不明とされていましたが、2003年、金沢市の池で大群落(根茎が枝分かれしつつ長く伸びているので、どこからどこまでが1株かは分かりません。従って、株数不明です。)を見つけました。
図1 デンジソウ(田字草)。分かりやすい名前だ。(2003年10月20日)

 2003年10月20日、とある池の畔に立ちました。この池へは以前にも来たことがあるのですが、その時は満々と水をたたえ、不気味な感じの池でした。おまけに、池の縁では、マムシを含めて3匹の蛇に出会い、あまり印象の良い池ではなかったのです。
 この日は、水が引いていて、長靴ならば池の中へ入れそうな気配だったので、池の畔へおりて、池の中から顔を出した岩まで行き、何気なく水面を見ると、つややかな「四つ葉のクローバーが浮かんでいた」というわけです。このときの興奮は、クロヤツシロランの花を見つけたときに勝るとも劣らないものでした。
 山間の静かな池で、
あった! デンジソウ!!と思わず叫んでいました。この日の帰途は、とても満ち足りた気分でした。植物好きの読者の皆様には良くおわかり頂けると思います。
 それにしても予想していたより大形の葉でした。


図2 さしわたし4cmを超す。イメージしていたより大きな葉だった。
図3 2坪ほどの水面をデンジソウが隙間なく埋めていた
図4 水深が深いとすべての葉が図3のように浮葉となっているが、水深が浅い場合には空中へ出てくることがある
図5 これは、水が少なくなって、岩が露出した状態である。水が少ないときには平気で空中へ葉を伸ばすことのできるデンジソウだが、水が少なくなって空中へ取り残されると枯れやすいのはどういうことなのか不思議である
図6 これも水が少なくなって空中へ取り残されて枯れてしまった例だが、根茎は生きているので、新しい葉が空中葉として伸びてきている
図7 干上がった池の底から新しく空中葉が伸びてきている
図8 葉は始め、ゼンマイのように巻いている 図9 巻が解けて小葉が見えてくる 図10 4個の小葉が裏を外にして閉じている

 葉はシダらしく、最初渦巻き状になっており(図8)、だんだん解けると扇形の小葉が見えてくる(図9)。これは4個の小葉が裏側を外に向けて畳まれた状態であり(図10)、この後、図11のように開いていくのである。

図11 畳まれていた小葉が開いていく順序
図12 若葉 図13 若葉

 石川県自然史資料整備室(石川県立自然史資料館の前身)の野外調査で見つけたデンジソウをプランターで栽培していた。夏頃から、毎日のように胞子嚢果(デンジソウはシダなので、胞子を作る。胞子は胞子嚢の中に入っている。いくつもの胞子嚢がまとまって硬い殻の中に保護されている。これが、胞子嚢を入れた果実のように見えることから、胞子嚢果と呼ぶと考えると理解しやすい。)を探していたが見つからなかった。もっとも、図12のように葉が茂っていたので、探すことは困難であった。いつしか探すことも忘れていたが、11月17日、ふとのぞいてみる気になった。
 図13の上側のプランターが、水が無くなって乾き気味になっていた。葉もかなり枯れていたので、生え際を探していると、黒っぽい豆のようなものが目に付いた。「胞子嚢果」であった。
 日本水草図鑑(角野 1999)によると「胞子嚢果は堅く、長さ3〜5mm、はじめ白い軟毛に包まれるが、やがて毛は落ちて黒色〜褐色になる。中に数個の胞子嚢群があり、1個の大胞子を含む大胞子嚢と多数の小胞子を含む小胞子嚢が混じる。」とある。また、「水中での胞子嚢果の形成は観察したことがない。」ともある。
 水生シダは生きる(白岩 2000)によれば「胞子はいつ頃からつくられるか。自生地や栽培を通して観察した結果からデンジソウは日本では7月後半から9月末にかけてであることが確認できた。よほどよく注意していないと胞子嚢果をつけているのに出会うことは稀である。」とあるように、かなり見つけにくいもののようだ。

図14 デンジソウの胞子嚢果。長さは約4mmである

 胞子嚢果の詳細な構造は非常に興味深いのですが、謎の部分も多い。
解明はできていませんが、続編、デンジソウ(2)に引き継ぎました。引き続いてご覧下さい。

 デンジソウについての記述でもっとも詳しいのは、私も参考にしている「水生シダは生きる」(白岩卓巳 自費出版)でしょう。

私の最初の著作で自費出版の「知るほどに楽しい植物観察図鑑」での12ページにわたるデンジソウの記述は、おそらくそれに次ぐ内容であり、胞子嚢果の構造も詳しく解説してあります。同書は、絶版中とアナウンスしましたが、最近、新本10冊が倉庫から発見されたので、ご希望の方には、荷造り送料・送金料・消費税すべて無し、正誤表付きで2400円(郵便振替による後払い)のみでお分けします。最後の10冊なので先着順。ご希望の方は著者まで直接メールをお願い致します。メールアドレスは、ここです。

全国農村教育協会から出版された「植物生態観察図鑑」シリーズの第1作「おどろき編」(既刊)に続き、現在第2作「ふしぎ編」を制作中ですが、数年後の第3作には、より新しい内容を含めたデンジソウの章を設けるべく、現在取材中です。御期待下さい。


文献
 角野康郎.1999.日本水草図鑑:12.文一総合出版.
 環境省編.環境省自然環境局野生生物課希少種保全推進室 編集.2015.レッドデータブック          2014 8植物T:370.ぎょうせい.
 白岩卓巳.2000.絶滅危惧植物 水生シダは生きる:95−138.自費出版.


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